基地局を超えて:衛星接続がAIを活用したネットワークの未来を変える

衛星接続によって通信ネットワークのカバレッジが拡大し、従来の光ファイバーや基地局といったインフラの枠を超えた、AIを活用した新たなサービスが登場しています。
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Nicholas Ismail
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Global Head of Brand Journalism, HCLTech
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基地局を超えて:衛星接続がAIを活用したネットワークの未来を変える

AIが通信業界の様相を一変させる中、グローバルコネクティビティを支えるインフラもまた進化を遂げようとしています。長い間、ネットワークは主に光ファイバーケーブルや携帯電話基地局といった地上インフラに依存してきました。このようなネットワークの重要な拡張手段として現在台頭しているのが衛星接続で、広範なカバレッジや新たなサービスを実現し、AIを活用した接続のための新たなアーキテクチャとなっています。

MWCで行われたパネルディスカッションでは、Meenakshi Benjwal(HCLTechのTMT業界担当グローバルインダストリー・マーケティング責任者)が司会を務め、衛星ネットワークがデジタルインフラをどのように変えようとしているかを議論しました。このパネルディスカッションには、Joe Lawrence(HCLTechの通信担当CTO)とAsit Tandon氏(Telesatの最高ネットワーク&情報責任者)が登壇しています。

衛星接続、AIによるオーケストレーション、新しいビジネスモデルが通信業界の未来を再定義しつつある現状について、どのような議論が交わされたのでしょうか。

地上ネットワークの枠を超えて広がる接続性

光ファイバーと携帯電話基地局は、依然としてグローバルコネクティビティの基盤となっています。しかし、カバレッジは無限というわけではありません。辺境地域、海路、航空路、農村地域などは多くの場合、地上インフラの実用限界の外側にあります。

Tandon氏は、衛星接続によって従来のインフラでは届かないエリアまでカバレッジを拡大すれば、通信の空白地帯を埋めることができると説明します。

「基地局を越える―これは、あらゆる場所で通信が利用できることを意味します。光ファイバーや基地局は、対応エリアでは非常に優秀ですが、辺境や僻地の農村部、海上、航空路となると限界があります」(Tandon氏)

「非地上ネットワーク」と呼ばれることも多い衛星ネットワークは、地上システムの代替として設計されているわけではありません。むしろ、既存のインフラを補完し、カバレッジとレジリエンスの強化という極めて重要な役割を果たしています。

ただ、衛星の役割は変化しつつあります。個別のシステムとしてではなく、地上ネットワークと統合され、一元的な接続基盤として運用されるようになってきています。

「AIは、これらのネットワークを、インテントベースのプログラム可能な接続性という一元的な『層』として扱います」(Tandon氏)

AI時代の衛星接続

AIを活用したアプリケーションが増加し、接続インフラに新たな要求が課せられています。インテリジェントなシステムには、従来のインフラではカバーしきれない地域や環境に対しても信頼性の高い接続性が求められます。

Lawrenceは、衛星テクノロジーの進歩が格差の解消に一役買っていると言います。

「実際に可能性が広がるのは、LEO衛星やGEO衛星が利用されるエリアだけではなく、グローバルコネクティビティが整っていない地域だけでもありません。無線基地局のある大都市にもモバイル接続を提供できるということが、革新的であるといえます」(Lawrence)

これまで、リアルタイム接続に衛星ネットワークを使用する際の大きな障壁の1つは、遅延でした。低軌道(LEO)衛星が進歩したことで、遅延は大幅に短縮されています。

このような改善により、衛星接続の利用はもはやニッチな用途に限定されることはなくなりました。むしろ、次世代通信ネットワークの広範なアーキテクチャの一部になろうとしています。

この変化は、従来の通信システムを見直す機会にもなっています。多くの事業者は、依然として、旧世代のネットワークインフラ向けに設計された複雑な運用支援システムや業務支援システムに依存しています。

「システムのアーキテクチャと設計を完全に刷新できます」(Lawrence)

AIでオーケストレーションするハイブリッドネットワーク

は、地上と衛星インフラ間の接続性を調整するうえで中心的な役割を果たしています。ネットワークをプログラム可能なアーキテクチャに統合することで、事業者はリソースを動的に管理し、パフォーマンスを最適化できます。

Tandon氏は、衛星ネットワークはもはや予備的な手段としてではなく、企業の接続環境の中核をなす要素として設計されるようになってきたと説明します。

「現在、エンタープライズアーキテクチャの策定段階から非地上ネットワークが検討の対象となっています」(Tandon氏)

長い間、衛星は不要なインフラと見なされることが少なくありませんでした。組織が衛星接続を主要なネットワーク設計の一部として捉え始めたことで、その認識は今変わりつつあります。

AIにより、これらのネットワークでは、需要やアプリケーションの要件に応じてリソースを動的に割り当てることできます。たとえば、トラフィックが多いエリアや、ミッションクリティカルなワークロードが処理されているエリアに向けて、衛星ビームの指向を変更できます。

「制御層では、AIがネットワークの能力に基づいてオーケストレーションを行います」(Tandon氏)

このオーケストレーションにより、ハイブリッドネットワーク全体でインテリジェントなトラフィックの優先順位付けができます。

「需要に合わせてビームを特定の方向に向け、ポリシーの適用とトラフィックの優先順位付けを行います」(Tandon氏)

ユーザーから見れば、接続しているネットワークを問わずエクスペリエンスはシームレスなままです。

「エンドユーザーやアプリケーション側では、接続Aを経由するか接続Bを経由するかによって違いを感じることはありません」(Tandon氏)

進化する通信ビジネスモデル

ネットワークがプログラム可能になり、AI活用型に進化してきたことを受け、通信事業者もビジネスモデルの見直しを進めています。従来の料金体系では、主に帯域幅の使用量に重点を置いていました。

ですが、AIを活用した接続を基盤とする新しいサービスがそのモデルを変えつつあります。

「デジタルビジネスモデルは進化し、変化していかなければなりません」(Tandon氏)

事業者は、単に帯域幅に対して課金するのではなく、サービス品質、アプリケーションのパフォーマンス、ユーザーエクスペリエンスに基づいたビジネスモデルを検討しています。

「料金モデルは、純粋な帯域幅ベースのモデルから、エクスペリエンスベースのモデルへと変わるでしょう」(Tandon氏)

これは技術的な変化でもあり、戦略的な変化でもあります。Tandon氏によると、このような変化はすでに通信業界のトップレベルで議論が進められているといいます。

「これについては、取締役会やCEOレベルで議論が進められています」(Tandon氏)

Lawrenceは、このような変化が企業の運用効率の向上に寄与し、新たな収益源の開拓にもつながると付け加えました。

「このような変化により、各企業は売上高を伸ばし、純利益を改善できるようになるでしょう」(Lawrence)

新たな産業用途に対応

地上接続と衛星接続を組み合わせたハイブリッドネットワークにより、AIを活用した新たな産業用途にも対応できます。

Lawrenceは、大規模な施設全体でのリスク検知に遠隔監視システムが活用されている産業現場の事例を紹介しました。

大規模なインフラ環境では、わずかな不具合であっても重大な結果を招く可能性があります。

「製造工場にほんのわずかな錆の跡があるだけでも、数百万ドル規模の負債につながるおそれがあります」(Lawrence)

衛星接続とAI搭載ドローンを使えば、技術者が現場に赴くことなく、施設の点検を行い、データを事業者に送信できます。

「衛星通信を活用すれば、ドローンは完全にAIで操作され、遠隔で管理できます」(Lawrence)

多くの場合、このようなシステムは世界中の遠隔地から操作できます。

「衛星通信のおかげで、世界のどこか別の場所から作業している可能性もあります」(Lawrence)

宇宙ベースネットワークにおけるサイバーセキュリティ

衛星コンステレーションが拡大するにつれ、サイバーセキュリティはますます重要な懸念事項となっています。各衛星と地上局は、それぞれ新たな脆弱性の発生源となり得ます。

Tandon氏は、LEO衛星や地上管制システムの増加に伴い攻撃対象領域全体が拡大していると説明します。

「低軌道衛星が爆発的に増え、地上での管制システムも増加する中、悪意のあるアクターにとって攻撃の対象となる領域も拡大しています」(Tandon氏)

これらのネットワークを保護するには、インフラとそれを管理するAIモデルの両方の安全を確保する必要があります。

「インフラを保護するだけでなく、そのインフラを稼働させているAIモデルも保護しなければなりません」(Tandon氏)

AIシステム自体も、不正操作から保護する必要があります。

「AIモデルには、いわゆる『モデルポイズニング』を防ぐための安全策を講じる必要があります」(Tandon氏)

このようなリスクに対処するには、サイバーセキュリティシステムもAIを活用したネットワークアーキテクチャと歩調を合わせて進化させなければなりません。

と関連ツールは、AIに対応したアーキテクチャでなければなりません」(Tandon氏)

次世代ネットワークに向けた備え

衛星接続は、次世代以降のへの移行においても重要な役割を果たすと見込まれています。

Lawrenceは、6Gをめぐる業界での議論が、すでに通信事業者のネットワーク設計や帯域幅の割り当てに対する考え方に影響を与えていると指摘しました。

「5G時代の先にある、6Gについては多くの議論がなされています」(Lawrence)

業界が将来のアーキテクチャへと移行しようとする中、衛星ネットワークはカバレッジと接続性の可能性を広げています。

事業者にとって、単に既存のインフラをアップグレードするだけでなく、AIを活用したサービスやハイブリッド接続に最適化された新しいアーキテクチャを設計するチャンスがやって来ています。

「HCLTechには一流のエンジニアが集まっていて、Telesatのような企業と協力することで、市場に画期的なサービスを提供できます」(Lawrence)

グローバルコネクティビティに向けた新たな基盤

通信ネットワークが進化するにつれ、衛星はネットワーク設計の周辺から中心へと立ち位置を変えつつあります。

かつては主にバックアップ層と見なされていたものが、現在ではデジタルインフラの中核的な構成要素となり、AIを活用したサービスやハイブリッド接続を支えています。衛星ネットワークは、地上ネットワークと並んで企業アーキテクチャに統合されるケースが増えています。

Lawrenceは、この変化によってすでに業界を問わず新たなユースケースが生まれていると指摘しました。HCLTechのAI ERSといったプラットフォームにより、企業はAIを活用した検査、監視システムを導入し、衛星接続を併用しながら大規模に運用できます。AI、エッジインテリジェンス、衛星ネットワークを組み合わせることで、組織は分散した資産を監視し、これまでアクセスが困難だった場所でも自律的に運用できるようになります。

パネルディスカッションの締めくくりとして、Benjwalがパネリストに衛星接続という次の時代を一言で表すよう求めました。

「衛星はもはや保険のような存在ではなく、デジタルコネクティビティの戦略的な柱になります」(Tandon氏)

「基地局を越えます」(Lawrence)

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