臨床試験ソフトウェアのSaaS(Software-as-a-Service)開発のリーディングカンパニーである米国のMedidataは、パンデミックの発生に伴い、モバイルヘルスとバイオマーカーデバイスの需要急増に直面しました。この需要は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン開発に向けて準備を進める製薬会社やCRO(医薬品開発業務受託機関)から生じたものでした。このような背景から、同社はデバイス配送ネットワークを拡大し管理する必要がありました。
エッセンシャルビジネスとして緊急認可を取得したMedidataは、デバイスをより良い成果につながる形でより迅速に世界中の拠点に届けることができるパートナーを求めていました。同社は2006年以来、HCLTechとの協業で成果をあげていたため、拡大された規模でのハードウェアのプロビジョニング体制を構築・支援し、顧客満足度の向上を実現するパートナーとして当社を起用しました。
課題
臨床試験のグローバル物流とサポートソリューションの需要急増に対応
Medidataは臨床試験に参加する患者に製薬会社が支給するモバイルデバイスをグローバルに配布するための運用モジュールを必要としていました。また、製薬会社の顧客がリモートで安全に臨床試験を実施できるようにする必要もありました。

これらの要件には次のような課題がありました。
- 急増する需要に見合った臨床試験デバイスの設定と出荷を行うため、グローバルな事業展開を確立しているベンダーを採用すること
- デバイスを設定しロックして、意図された目的にのみ使用できる状態にすること
- 迅速な納期を遵守すること(そのためには製品の配送チャネルがシームレスに機能する必要がある)
目的
ハイブリッド型/分散型臨床試験で使用するための設定済みデバイスの提供
HCLTechはMedidataと協力して最善の方針を決めました。それは、エンドクライアントの臨床試験スケジュールに対応できる、迅速かつ堅牢で拡張性の高い配送を実現する配送センターソリューションです。
クライアントは次のような目標の達成を希望していました。
- モバイルデバイス管理(MDM)環境を構築してデバイスを登録する
- 必要なデータ収集ソフトウェアをデバイスにインストールする
- すべての臨床試験実施施設にデバイスを出荷する

ソリューション/解決策
ハードウェアのプロビジョニング能力を拡大する堅牢なグローバル配送モデル
2020年7月のパンデミックのピーク時に、当社のライフサイエンス・ヘルスケア(LSH)チームはMedidataと連携して、中国、ブルガリア、米国にあるクライアントの配送センターから79か国にモバイルデバイスとウェアラブルデバイスを供給しました。
また、当チームは以下のような方法でサポートを提供しました。
- プロビジョニングの柔軟性と拡張性を高めるため、インド、日本、ブラジルに3か所の配送センターを追加
- MDMのエンジニアリング、デバイスのプロビジョニング、臨床試験ダッシュボードでのレポート機能を支援
- 自動化されたデバイスプロビジョニング・ポータルを導入。ユーザーがデバイス、付属品、返却のリクエストを迅速に提示できるようにし、クライアント側でもこれらのリクエストに迅速に対応できるようにした
- core-flex(コアフレックス)の専任人材配置モデルを活用し、人材配置モデル、雇用予測、配送センターモデル、リードタイム、在庫などのパラメータに焦点を当てて、グローバル展開と迅速な立ち上げの要件に対応
- MDM環境にデバイスを登録し、デバイスが意図された目的でのみ使用されるようロック
- 出荷前にクライアントのアプリケーションを設定し、セキュリティを確保しながらモバイルデバイスにインストール
- 品質保証手順を確立し、品質とデータインテグリティを確保
インパクト/成果
発注の合理化、配布能力の大幅な向上、高い顧客満足度
当社のLSHチームは、グローバルな立ち上げに必要な要件を3か月以内で実現し、COVID-19のワクチンの迅速な開発に貢献しました。また、納期どおりの対応、品質指標、承認されたSOP(標準作業手順書)の遵守を徹底できました。
クライアントは次のような優れた成果を実感できました。
- 合理化された注文プロセス
- デバイスがセキュリティ面に配慮してロックされているため、被験者は意図された目的にのみデバイスを使用可能に
- デバイスの配布能力が飛躍的に向上 - 月間1,500台から10,000台以上に
- 優れた顧客満足度指標。99.6%以上のデバイスがSLA(Service Level Agreement)の期限内に届けられ、目標の90%を数ポイントも上回る結果に
グローバルな展開力を持つ、信頼できる長期的なパートナーとして、HCLTechは世界的パンデミックのピーク時に立ち向かうMedidataを支援するうえで重要な協力者の役割を果たしました。クライアントは当社のソリューションとその顕著なビジネス上のメリットに満足し、当社との契約をさらに3年間延長しました。
両社は現在、Medidataのハードウェアプロビジョニングに関するバリューチェーン全体を自動化するための次のステップや、HCLTechとクライアントが他の製薬会社にさまざまなサービスを提供するためのパートナーシップの可能性について話し合っています。