大手金融サービス企業が大規模にインフラのレジリエンスを強化した手法

顧客の信頼を得るには、インフラのレジリエンスが不可欠です。トランザクション件数や規制要件が増大する中、単一障害点を削減することが、大規模な環境下で事業継続性を維持するためのカギとなります。
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Santosh Mokashi
Santosh Mokashi
EVP & Global Delivery Head, DFS Financial Services, HCLTech
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大手金融サービス企業が大規模にインフラのレジリエンスを強化した手法

業界において、のレジリエンスは顧客からの信頼と密接に結びついています。システム障害が発生すれば、その影響はたちまち取引やサービス可用性、そしてそのシステムを支える金融機関への信頼へと波及します。

この課題は、ある大手消費者金融サービス企業にとっても極めて重要なテーマでした。この企業は数百万件もの顧客トランザクションを支える環境で、7,000台の仮想マシン、8,000台のサーバー、20ペタバイトのデータを管理していました。これほどの規模になると、インフラは単なるバックエンド機能にとどまりません。顧客が残高照会や決済、あるいは意図通りに動作することを期待する不正防止機能を利用するたびに、可用性、正確性、セキュリティを根本から支える基盤となっていました。

環境がより複雑化する中、従来のアーキテクチャが単一障害点を作り出していたため、この課題は次第に差し迫ったものとなっていました。顧客がサービスの継続的な稼働を期待する一方で、規制当局は運用レジリエンスと事業継続性をより重視するようになっていたからです。

こうしたプレッシャーは業界全体に広がっています。McKinseyの調査によると、アジア太平洋地域の大手銀行の73%が、最大の非財務リスクにサイバーセキュリティを挙げています。より大局的な視点では、2024年に発生したCrowdStrikeによるインシデントは、技術的な不具合が企業間にいかに大規模に連鎖し得るかを示しています。この障害はフォーチュン500企業に54億ドルの損害を与えたと試算されています。規制の動向も同じ方向に進んでいます。2025年1月にEUのデジタルオペレーショナル・レジリエンス法(DORA)が施行されたことで、金融サービス事業全体で、より確実な事業継続性とレジリエンスの必要性が一段と強化されました。

金融サービスの業界規模で、単一障害点がより深刻な問題となる理由

金融機関にとって、レジリエンスとは単に重大なインシデントからの復旧だけを意味するものではありません。まず重要なのは、日常の障害やパフォーマンスの問題、あるいはインフラの変更が、顧客に影響を及ぼす確率を減らすことです。

この大手企業にとっては大規模な環境そのものが、課題をより複雑なものにしていました。数千台の仮想マシンやサーバーが重要なワークロードを支える一方、膨大な量の顧客データのセキュリティを確保し、かつ常時利用可能で復旧可能な状態を維持しなければならなかったからです。従来のアーキテクチャでは、集中型のシステムや分散が不十分なインフラに主要なサービスが依存している場合、ハードウェアの障害、ソフトウェアの不具合、あるいは設定ミスが、より広範な被害を引き起こす可能性がありました。

監視の複雑さも問題に拍車をかけていました。可視性が断片化していると、実際にパフォーマンスに影響が出るまで、性能が低下している兆候に気付かないことがあります。金融サービスの環境において、この状況は取引の遅延やサービスの中断、運用リスクの増大に直ちに直結しかねません。

そのためこの企業には、集中リスクを低減し、環境全体の可視性を向上させ、日々の業務を中断することなく保護機能を強化できる、より高いレジリエンスを備えたモデルが必要でした。

インフラモデルを変革した方法

この変革では、単一障害点の削減、環境全体の可視性の向上、そしてデータ保護とガバナンスの強化に焦点が当てられました。これを実現するため、同社はHCLTechと提携し、主要なインフラのモダナイゼーション、運用レジリエンスの向上、そして将来の成長にも対応できる、拡張性に優れた基盤の構築に取り組みました。

分散型アーキテクチャによる集中リスクの低減

変革の中心となったのは、7,000台の仮想マシンのアベイラビリティゾーン(AZ)への移行です。このアーキテクチャは本番環境全体における単一障害点を削減するために設計されました。ワークロードをより効果的に分散させることで、ハードウェア、ネットワーク、あるいは施設に局所的な障害が発生しても、広範なサービス停止を引き起こすことなく柔軟に対応できる環境が構築されました。

これにより、メンテナンス作業、セキュリティアップデート、予期せぬ障害への対応を、稼働中の運用への影響を最小限に抑えて実行できるようになりました。独立したインフラコンポーネントに依存するのではなく、設計段階からレジリエンスを備えた環境へと生まれ変わったのです。

可視性の向上とプロアクティブな監視

この変革により、運用の可視性も強化されました。VMware Aria統合プラットフォームを導入し、リアルタイムのパフォーマンスおよびキャパシティダッシュボードを通じて10,000台ものシステムを監視できるようになったため、運用チームがインフラの健全性をより総合的に把握できるようになりました。

これにより、問題をより早期に特定し、精度の高いキャパシティプランニングをサポートできるようになりました。またパフォーマンスの問題が顧客に影響を及ぼした後に初めて発覚するリスクも軽減しました。これは技術面の変化にとどまらず、運用面にも変化をもたらしました。各チームがリアクティブな問題管理から、よりプロアクティブな監視に切り替える体制が整ったのです。

大規模なデータ保護と回復性の強化

このレジリエンスモデルでは、データ保護も極めて重要な要素でした。同社は20ペタバイトに及ぶバックアップインフラを実装し、過酷な状況下でも確実に復旧できるという信頼性を高めるために、定期的な復旧テストを実施しました。

また自動化された脆弱性管理を13ペタバイトのストレージ全体に拡張し、7,000件のソフトウェア定義ファイアウォールルールを導入して環境全体のセキュリティカバレッジも強化しました。これにより、管理対象データの規模や機密性に最適な保護モデルを構築できました。

強固なガバナンスによる変革のサポート

環境が極めて大規模で複雑だったため、変革の過程ではガバナンスも重要な役割を果たしました。システム全体にわたるOSのアップグレード、データベースのモダナイゼーション、およびサポート終了に伴うシステム廃止を統括・調整するため、専任のプロジェクトマネジメント・オフィス(PMO)が設立されました。

これにより、この企業は変更プロセスに伴うリスクを管理し、コンプライアンス要件を維持しながら、顧客向けの業務を中断することなく変革を進めることができました。インフラのモダナイゼーションと運用の継続性は実際の現場で両立できるということが、このプロジェクトで実証されました。その理由は、ガバナンスが最初からプロセスの中に組み込まれていたからです。

レジリエンスの強化が信頼性の向上につながる理由

金融サービス業界において、顧客からの信頼は日々の細かなやり取りを通じて深まることも、損なわれることもあります。たとえ決済や残高照会、不正アラートの裏側にあるインフラを見る機会がなくても、彼らはその成果を処理速度、信頼性、そして継続性という形で直接体験しています。

この企業にとって、インフラのレジリエンス強化は、そうした日々のやり取りを支えるより安定した基盤を築く一助となりました。単一障害点を削減し、可視性を高め、復旧体制とガバナンスを強化したことで、同社はサービス継続性を損なうことなく数百万件のトランザクションを支える強固な体制を整えることができました。

基盤となるシステムは顧客からは見えないバックグラウンドで稼働していますが、実際は極めて中心的な役割を担っています。現代の金融サービス業界では、顧客の期待と規制当局の監視の両方が、これまで以上にレジリエンスを形作るようになりました。そうした中、インフラの設計は信頼を維持するための重要な要素となっているのです。

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